保険薬局の中に在宅医療専門の薬局があることはご存知でしょうか。 高齢化社会が進んでいる今の時代、この「在宅専門の薬局」がどんどん増えてきていますので、転職を考える際に求人情報などで見たことがある人も多いと思います。 今後さらに、この在宅専門の薬局が活躍することが予想されるますし、在宅医療の勉強が必須になるだろうと考えると、在宅医療を行っている薬局に転職する価値は十分にあると言えます。 ただ、その業務の特徴などを知らないと、転職への一歩をなかなか踏み出しづらいというのが本音ですよね。 今回は、在宅医療専門の薬局にスポットを当て、仕事の特徴や通常の薬局の業務と違うところなどを取り上げてみたいと思います。
在宅専門の薬局の業務内容
在宅というと、お年寄りや体の不自由な方のご自宅へお薬を届けて指導することをまず考えるかもしれませんが、実際は患者さんのご自宅へのお届けだけではなく、老人保健施設からの処方箋を受け付けて調剤し、施設に届けてそこで指導するというようなこともします。
私が勤めていた在宅専門の薬局では、ご自宅の訪問よりも老人保健施設の調剤・訪問が主な仕事でした。
通常の薬局と全く違うところとは?
「お薬を渡す場所が薬局のカウンターではなく施設やご自宅というだけで、あとは通常の保険薬局と大して変わらないでしょ?」と思った方もいると思います。
私も転職するまではそのように考えていたのですが、在宅専門の薬局の調剤・監査は、通常の保険薬局の調剤とは実はかなり異なります。
保険薬局で薬を受け取る患者さんのほとんどはご自分で薬を管理できる方なので、よく説明をしてお渡しすれば服用に問題は生じませんが、施設などに入居されている患者さんやご自宅で寝たきりの生活を送っている患者さんの薬は看護師や介護士、またはご家族の方が管理することが多いため、管理しやすいような状態に調剤することが基本です。
看護師や介護士、ご家族の方が管理しやすい状態 ―――― つまり、用法用量を間違わないようにするための工夫が必要な調剤・監査ということです。
全ての在宅医療を行っている薬局が同じ工夫をしているとは言えませんが、多くの薬局では薬を一包化し、その一包化の袋の一部を見やすいように朝、昼、夕、寝る前で色を変えて塗るということをしています。
多くの患者さんの薬を管理している施設では、これが一番分かりやすい調剤の形なんだそうです。
色を塗ると聞いて、「なんだ、手間がかかるけど結構簡単かも」と思った人もいますよね。
たしかに、この色を塗る作業は単純作業で一見簡単そうに見えるのですが、実はこれがとても大変な作業なんです。
まず、在宅専門の薬局では、かなりの数の老人保健施設からの処方箋を受け付けていて、その施設によって色のパターンが異なります。
例えば、ある施設では、朝―昼―夕が赤―黄―青。 でも違う施設では、ピンクー緑―黒。というように、それが施設の数だけパターンがあると思ってください。
また、食前の薬には二重線、一包化の袋に日付を入れるか入れないか、薬名を入れるか入れないかも施設や患者さんによって違うので、何と言うか、オーダーメイドの薬の調剤をしているような感じと言ったら分かりやすいでしょうか。
このオーダーメード調剤を正確かつ迅速に行うため、在宅専門の薬局には施設ごとの仕様ファイルがあり、薬剤師はそのファイルを常に見ながらの調剤・監査となります。
特に監査に関しては調剤以上に大変です。
一包化の薬の監査は薬の刻印を一つ一つチェックしなければならず、ただでさえ大変なのに、それに加えて袋の色や印字も監査しなければいけないということです。
*もし色を間違えれば、服用のタイミングを間違えてしまう恐れにもつながり、重大な過誤になることから通常の2倍も3倍も神経を使うことになります。
このことから、在宅専門の薬局の調剤・監査がかなり大変だと言うことが想像できるのではないでしょうか。
運転免許は必ず必要?
在宅専門の薬局に転職するにあたり、運転免許が必要かどうかも気になるところだと思います。
老人施設の多くは、駅から遠いのどかなところに位置しているため、車がないとお薬を運んだり指導に行ったりすることができないのは事実です。
そのため、求人欄に運転免許が必須と書いてあるところもあり、運転免許を持っていたほうが転職に有利なのは間違いありません。
ただ、薬局によっては専門のドライバーを雇用していて、彼らに施設まで連れて行ってもらえるというところもありますし、また内勤専門で求人を出している薬局もありますので、運転免許がないからと言って在宅専門の薬局への転職をすぐにあきらめる必要はないですよ。
詳しいことを知りたい場合は、転職エージェントに登録して、免許の必要性や専門のドライバーがいるかなど聞いてみるといいと思います。
大変だけれどやりがいを感じる在宅専門の薬局
今回は在宅専門の薬局の仕事の特徴について説明をしました。
通常の薬局よりも、調剤の手間や監査のチェック項目が多いなど、大変だなと感じることが多々あることは事実です。
ですが、その大変さは患者さんのために役立っている大変さで、こちらが努力することで助かっている人たちが大勢いるということでもあります。
老人保健施設が増えるにつれて在宅専門の薬局も増えていきます。高齢化社会で活躍をしたいと思ったら、一度転職を考えてみてはいかがでしょうか。