「調剤薬局」の主な業務は、処方箋に基づく薬の調剤や患者の服薬指導、薬歴管理です。 世間がイメージする「薬剤師らしい仕事」と言えるでしょう。 最近は在宅医療に携わって、患者の自宅や介護施設に薬を届けたり、服薬指導をしたりする調剤薬局もあります。 近年、患者の診察と薬の処方を分ける「医薬分業」が進み、調剤薬局は慢性的な人手不足に陥っています。 薬剤師にとっては売り手市場であり、転職も比較的容易だと言われていますが、一方で注意点もあります。 調剤薬局の事情や仕組みを理解して、後悔しない転職を目指しましょう。
需要が多い調剤薬局
調剤薬局の求人は、正社員から契約社員、パート、アルバイトなど、あらゆる雇用形態で高い需要があります。
正社員になっていずれは独立や薬局長を目指したり、出産後に子育てしながらパートで働いたりするなど、個々の目的や事情に合った柔軟な働き方ができます。
休みの多さも魅力です。
多くの調剤薬局は「門前薬局」と言って医療機関の近くに店舗を構えている場合が多く、勤務体制もその医療機関に準じています。そのため夜勤はなく、ほぼ暦どおりに休めます。
ただし、商業施設内にある調剤薬局はシフト制で休日も出勤するのが一般的です。それでも病院やドラッグストアよりは休みが多いと言えるでしょう。
調剤薬局の忙しさを計る目安は?
調剤薬局の仕事量は訪れる患者の数に比例し、近くの医療機関の規模にも左右されます。
また、扱う薬の種類によっても処方にかかる時間は変わります。
例えば粉薬や水薬は長くなりがちです。複数の薬を一包化するのも手間がかかります。総合病院になると診療科目が多くなるため、薬の種類も多岐にわたります。
こうした仕事量の多い少ないは1日の処方箋の枚数で判断できます。
薬事法第5条第2号の規定に基づいた厚生労働省令では、1人の薬剤師が1日に取り扱う処方箋の枚数は平均で40枚以下が望ましいとされています。これより多くなるほど忙しいと言えるでしょう。
調剤薬局で求められる人材
調剤薬局へ転職するための特別な資格はありません。
薬剤師の免許があれば未経験者でも受け入れてくれます。年齢制限も緩やかで、70代の薬剤師が活躍している調剤薬局もあるほどです。求人数は病院よりはるかに多く、ドラッグストアと同等くらいです。
求められるのはコミュニケーション能力が高く、明るい性格の人です。
患者と接する機会が多く、協調性が必要な職場だからです。
さらに多くの調剤薬局では、大半の業務がIT化されています。パソコンを使えると未経験者や高齢の転職でも有利になるでしょう。
転職のしやすさでは地方にある調剤薬局の方が有利です。
薬剤師の数が少ないため、月収70万円を超える破格の給料を提示するところもあります。その代わり、職場が日々の買い物にも不自由するようなへき地にある場合が多く、通勤には車が必須です。
一方、都心部は薬剤師の数が多いので、それほど給料は高くなく、誰でも転職しやすいとは言えません。
調剤薬局の種類別によるメリット・デメリット
調剤薬局には中小の個人経営と、大手チェーンの2種類があります。
個人経営のところは、クリニックのように規模が小さい病院の門前薬局である場合が多く、それほど忙しくはありません。
一方で研修制度に乏しく、未経験者はOJTや業務時間外の独学で追いつく必要があります。人間関係はアットホームな反面、一度こじれてしまうと居心地が悪くなるかもしれません。倒産や吸収合併のリスクもあります。
大手のチェーンは、多忙で福利厚生が充実しており経営面でも安定しています。
従業員の数が多いので、比較的希望どおりに休みを取得できるメリットもあります。研修制度が充実しているので未経験者でも安心です。
その代わり自分の勤務先だけでなく、多店舗のヘルプに入らなければいけなかったり、時には転勤を命じられたりする可能性があります。
どちらが良いかは、働き方や目標によって変わるので人それぞれです。相性もあるので、面接を通して見極めたいところです。
転職サイトや専門家の力を借りよう
調剤薬局への転職は自力でも可能ですが、探せるエリアや件数には限界があります。
特に遠方の求人にアプローチしたり、希望する働き方に近づけたりするには、全国の求人情報が集まる転職サイトの利用や専門家のサポートが必要です。
専門家はアドバイザーやエージェント、コンサルタントと呼ばれています。彼らは福利厚生や職場の雰囲気など、専門家だからこそ知り得る情報を持っている可能性があります。
また、面接時の職場見学も1人で直に依頼するよりは、専門家を通した方が実現しやすいでしょう。
利用するからには自らの意向を余さず伝えて、転職を成功させたいものです。