薬剤師の職場の多くは民間企業ですが、公務員として働く薬剤師もいます。 公務員と言えば利益追求よりも国民や地域に貢献するために働くイメージがあります。 また雇用や給与が景気に左右されず安定しているため、薬剤師に限らずどの業種からも人気です。 そんな「公務員薬剤師」になるには、どんな方法があるのでしょうか。
公務員の薬剤師って何をするの?
公務員には大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があります。
前者は国の公務員であり、後者は都道府県や市町村など地方公共団体の公務員です。
公務員薬剤師の職場として特に馴染み深いのは国公立の病院でしょう。
民間企業の調剤薬局と同様に院内薬局で調剤や薬歴管理、服薬指導をしたり、病院薬剤師として病棟で活動したり、病院が独自で行う医療調査や研究に携わったりします。
次に馴染み深いのが「保健所」での勤務です。
薬事・食品・環境の衛生管理を目的に関連施設の立ち入りや各種申請に対しての許可、啓蒙活動を行います。主に薬局や飲食店、銭湯やプールなどが対象です。
他にも都道府県庁や衛生研究所、消費生活支援センターでの勤務があります。
異色なのが麻薬を取り締まる仕事で、厚生労働省の職員(麻薬取締官)として勤務する場合と、地方公共団体の職員(麻薬取締員)として勤務する場合があります。
公務員薬剤師の収入が良いって本当?
安定が魅力の公務員薬剤師ですが、決して初任給が高いわけではありません。
国家公務員の薬剤師で年収は300万円台、地方公務員は地方公共団体による差はありますが、低いところではそれ以下になる場合もあります。
民間企業の調剤薬局や製薬会社では初年度から600万円台の年収もあり得ることを考えると見劣りします。
ただし公務員薬剤師は定期的な昇給があるので、早々に収入が頭打ちになって伸び悩む民間企業の薬剤師と比べて、最高年収や定年退職まで務めた時の総収入は上回ります。
住宅手当や扶養手当、寒冷地手当など福利厚生が手厚いのも公務員ならではです。
公務員薬剤師の配置換えをどう捉えるか
一方で公務員薬剤師はおおよそ3年おきに「配置換え」があります。
国家公務員の薬剤師であれば全国各地に赴任しなければいけない場合もあります。
それに比べると地方公共団体は移動する範囲こそ狭いものの、定期的に仕事が変わってしまうため、その道のプロフェッショナルになれないというジレンマがあるでしょう。
職種によっては薬に触れたり薬剤師の知識を発揮したりする機会がほとんどありません。
薬剤師ならではの仕事をしたい場合には、初めから国公立病院を志望するなど職種を限定した方が良さそうです。
逆に様々な職種を体験して幅を広げたい薬剤師にはメリットになります。
公務員試験の合格が必須
公務員薬剤師になるには、薬剤師の資格に加えて公務員試験の合格が必須です。
国家公務員は「総合職」と「一般職」、「専門職」に分かれています。
薬剤師のスキルを活かしたいのであれば政策の企画や立案、調査や研究に携われる総合職か、専門職の「食品衛生監視員(空港や港で検疫をする)」の二択です。
応募資格は2017年(平成29年)度の試験であれば、1987年(昭和62年)4月2日以降生まれで、2018年(平成30年)3月末まで大学を卒業できる人が対象になります。
4月中に願書を受け付け、4~8月にかけて試験があります。
一方、地方公務員は自治体によって異なり、多くは7~9月にかけて試験があります。
職種を特定せずに薬剤師を募集する場合と、病院など決まった職場での採用を前提に募集する場合があります。
国家公務員よりも年齢制限は緩めですが、少ない募集人数に多くの応募者が殺到するので狭き門であることには変わりません。
転職サイトは使えない?
少数ですが、臨時職員など別の形態で雇用してから公務員試験の合格を経て公務員薬剤師になれる場合があります。
ただし、このような求人はほとんどが非公開で転職サイトに登録しないと見られません。
たとえ見つけたとしても、いざ公務員薬剤師になれた後で思いがけない職種に配置される可能性もあります。担当のコンサルタントに相談すれば、そのような情報も詳しく教えてくれるでしょう。