調剤の仕事をしている多くの薬剤師は、病院または保険薬局で働いていますが、中にはクリニックの薬局で働いている薬剤師もいます。 「クリニックの薬剤師の仕事」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか？ 病院の薬剤師の仕事から病棟業務を除いた仕事だと思う人。 保険薬局の仕事とさほど変わりがないのではないかと思う人。 などいろいろだと思いますが、クリニックで働いている薬剤師の数自体が少ないため、実際はあまりよく分からない転職しづらいという方もいますよね。 今回は、クリニックの薬剤師の仕事を取り上げ、そのメリットやデメリットを考えていきたいと思います。

クリニックの薬剤師の仕事

クリニックの薬剤師の主な仕事は、院内調剤と投薬業務です。

病床数が少ないながらもあるクリニックでない限り、病院薬剤師のような病棟業務はありませんし、注射剤の調整もないと思ってください。また、クリニック内の薬局の業務には保険薬局のように薬歴を書くという作業も会計業務もありません。

院内にいる医師から送られてきた処方箋に基づいて調剤をし、問い合わせがあれば電話なり、診察室に行くなりして医師に疑義照会をし、患者さんに投薬するというのが一連の流れです。

これを聞くと、「もしかして保険薬局や病院に勤めるよりも楽なのかもしれない」と思った人もいますよね。

たしかに業務数は少ないので楽には見えますが、所属する薬剤師の数や処方箋枚数にもよって忙しさは変わってきますし、そのクリニック独自の仕事がある場合もありますので、業務の数が少ないだけで一概に楽だとは言えないことは覚えておいてほしいところです。

クリニックの薬剤師のメリット

クリニックで働くメリットとして私が一番感じたことはズバリ、他の医療系の職種の人と関わることが多いところです。

保険薬局に勤めていると、問い合わせ以外で医師や看護師とコミュニケーションをとることはまずないですし、病院の薬局でも、薬局が病棟からとても離れたところにあったり、病棟業務をしていても服薬指導の時間に追われていたりと他の職種の人と話すことはなかなかありませんよね。

その点、クリニックは職場の面積が狭く、また働いている職員の数も少ないことせいか、医師も看護師も薬剤師もお互いに顔と名前を知っている関係になることが多いのです。

お互いに知っていることが何のメリットになるのか　―――。

一番は様々な職種の視野で学べるということだと思います。

医師の意見や看護師の意見を聞くことで、薬剤師としては気が付かなかったことに気付けることもありました。医師が病状だけでなく患者さんそれぞれの性格や生活スタイルなどを考えて薬を処方していることや、看護師がどのような思いで患者さんを指導しているのかということなどは、クリニックで働かなければ分かりませんでした。

また、私の働いていたクリニックでは時々医師の診察に立ち会うことができたり、臨床検査技師から検査について学ばせていただく機会もありました。病院で働いていた時はこのようなことが全くありませんでしたから、これらもクリニックで働くメリットであったと言えると思います。

クリニックの薬剤師のデメリット

それでは逆にデメリットは何でしょうか？

クリニックの薬剤師のデメリットとして感じたのは、新卒の薬剤師が最初に働く場所としては相応しくないということでした。

まず、先ほどお話ししたように、薬歴の記入や病棟業務、注射剤の調整などがないことから、それらを学ぶ機会がありません。薬歴や病棟業務は回数を重ねて慣れていくものですし、注射剤も実際に取り扱ったことがあるのとないのとでは薬剤師としての実力に明らかな差が出てきます。

また、クリニック内の薬局は院内調剤のための薬局であることと診療科の数が少ないことから、医薬品の数が限られていることが非常に多いです。たとえば、病院や保険薬局で何千という医薬品を取り扱っていればそれら薬について日常的に学ぶことができますが、クリニックの薬局ですと数百種類の医薬品しか扱っていないことも少なくなくありません。

そのため、クリニックの後に転職をした職場で、見たことのない薬が沢山ありすぎて即戦力として働けないと言ったことも考えられるのです。

定年までずっとクリニックの薬剤師として働くならばそれでも問題ないかもしれませんが、将来病院や保険薬局への転職を考える可能性があるならば、最初は薬剤師としての基礎を作れる場所で働いて、それからクリニックに転職することをお勧めしたいです。

クリニックへの転職は業務内容を良く知ってから転職を

今回はクリニックの薬剤師のメリットとデメリットについて見てきました。

一般的なことを書いてきましたが、クリニックの方針や雰囲気は医院長や所属している医師のカラーで決まることも多いので、今回の記事の情報に加えて、転職希望先のクリニックのことを面接などできちんと確認してから転職することも非常に大切です。

面接で確かめにくければ転職エージェントを利用した転職もおすすめですよ。

この記事が、クリニックへの転職を考えている薬剤師さんに少しでも役立つことを願っています。