薬剤師にとって、医療現場の最前線で知識やスキルを発揮できる「病院薬剤師」は憧れの職種と言えます。 ただしドラッグストアから転職するには仕事の内容がかなり違うように思えて、うまくやっていけるのか心配になってしまうでしょう。 実際のところ、転職した時にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

２種類の病院で異なる薬剤師の役割

病院薬剤師は、入院している患者を治療するために必要な薬を調剤して服薬指導するのが基本的な仕事です。

他にも医師や看護師から薬についての質問があれば回答し、時には患者に必要な薬を自ら提案する場合もあります。

ここまではすべての病院で共通する役割ですが、それ以外は病院が「急性期病院」か「慢性期病院」で異なってきます。

急性期病院での薬剤師

急性期病院は、常に容体が変化する患者を治療します。

その都度必要な薬は変わり、調剤にはスピードだけでなく正確さも要求されます。

さらに医療チームで治療にあたるので、会議があれば参加しなければいけません。

かなり忙しく、1日中仕事に追われることになります。

勤務はシフト制であり、夜勤や残業、休日出勤もあります。

一方で多くの症例に立ち会えるため勉強になります。

慢性期病院での薬剤師

慢性期病院は、容体が安定している患者が中心です。

あまり薬が変わらないので、慣れてくると余裕を持って仕事に取り組めます。

医師や看護師と薬について意見交換する機会はあっても、会議までするのは稀です。

勤務は定時に終了し、土日や祝日も急性期病院よりはずっと休みやすいでしょう。

ドラッグストアで接客に追われて調剤に専念できないことやシフト制の勤務に対する不満があれば、慢性期病院への転職で解消されるはずです。

転職で活かせるドラッグストアでの経験

病院薬剤師とドラッグストアの仕事は関連性がないように見えます。

けれども、調剤経験はもちろん複数の作業を同時にこなす能力は普段の業務に、接客マナーは医師と対峙する時や患者の服薬指導に役立ちます。

近年では「包括医療費支払制度」と言って、1つの疾患ごとに医療機関へ支払われる報酬が決まっており、その分だけ薬剤費のコストダウンが求められています。

ドラッグストアでの売上や利益を意識した働き方が、そのまま病院薬剤師になっても活かされるでしょう。

ドラッグストアから病院薬剤師に転職するメリット

患者の生命に深くかかわれる

急性期にしても慢性期にしても、投与する薬によって患者の容体や生命は左右されます。

時には治療の甲斐なく亡くなってしまう場合もあります。

その中には子供や若い人も含まれています。

だからこそ無事に回復してくれた時は喜びも一層強くなるでしょう。

こうした経験ができるのは病院薬剤師ならではです。

薬の専門家として活躍できる

患者に投与する薬はただ医師の指示に従うだけではなく、アドバイスを求められたり逆に自ら提案したりする場合もあります。

特にドラッグストアで働いてきた薬剤師は医療用医薬品以外にも市販の医薬品やサプリメントにも詳しいので、患者の飲み合わせや副作用にも迅速に対応できるでしょう。

臨床経験が後のキャリアに役立つ

病院薬剤師でいる間に積んだ臨床の経験は、他の病院だけでなくCRA（臨床開発モニター）やCRC（治験コーディネーター）へ転職する時もアピールポイントになります。

どちらも新薬が厚生労働省から認可されるために行われる「治験」に携わる職種です。

ドラッグストアから病院薬剤師に転職するデメリット

給料が安く福利厚生が乏しい

ドラッグストアの平均年収は500～600万円で、病院は400万～500万円です。

急性期病院でもこれに時間外勤務の分が上乗せされるくらいです。

仕事の忙しさは給料にはあまり反映されません。

ドラッグストアは店長になるとさらに年収を伸ばせますが、病院薬剤師は管理薬剤師や薬剤部長になるしかキャリアパスがなく、それはドラッグストアで店長になるよりも狭き門です。

福利厚生も民間の企業に比べると乏しい病院がほとんどです。

自宅の近くや地元の求人が少ない

病院薬剤師は人気が高く、そんなに数多く求人が出るわけではありません。

需要が高いのは薬剤師の数が不足している地方部であり、転職にあたっては転居しなければいけない場合もあります。

医師から下に見られる恐れがある

病院薬剤師は同じ治療に携わる以上医師や看護師と対等であるべきですが、病院によっては下に見られている場合があります。

そのようなところでは理不尽な要求に従ったり、本来はしなくてもいい仕事を手伝わされるかもしれません。

転職時にはよく確認したいところです。

誰よりも早く求人情報を知るのが大事

病院薬剤師に転職する時は、薬剤師向けの転職サイトに登録するのが一番です。

特に急性期病院は人気が高いため、求人情報が表に出る間もなく決まってしまいます。
転職サイトに登録後、担当になるコンサルタントに、求人が出た時にはすぐに教えてくれるようにお願いしておきましょう。

時期的には、特に配偶者の転勤や新卒者の辞退で欠員が生じやすい1～3月頃が狙い目です。

また、慢性期病院であっても労働環境や人間関係、雰囲気は求人情報だけでは分からないものです。

コンサルタントに質問すれば、詳しい情報を教えてくれたり求人先へ問い合わせてくれたりします。

転職サイトを利用すれば、ドラッグストアの仕事を続けながら効率的に転職先を探し出せるでしょう。